「悲運」

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「そういえば鷺沼さんは家族は?」 美歌の隣にいる黎子が尋ねる。 「今は私一人。両親は死んだの...還暦祝いの旅行最中に飛行機の墜落事故で...」 悲しそうな顔をする美歌。 「それって、三年前に起きた羽城山墜落事故!?」 「えぇ...母と父はその飛行機に...」 「それはお気の毒に...」 「大丈夫...ただ、両親がいつも私に言ってた。「早く結婚して孫の顔を見せて」って。それをかなえてあげられなかったのが悔しくて...」 歯をキリリと噛みしめる美歌。 「恋人とかいないんですか?」 続けざまに尋ねる黎子。 「いや...縁談はあったけどさ、いろいろあってね...今はいないわ」 「そうなんですね...鷺沼さん美人なのにどうして...」 「私もわからない...だけど、男ってなに考えているのか分からない。分からないから怖くなる時がある...だからかな」 少し笑ってみせるが、やはりどこか悲しそうだった。 「そういう嵐川さんは恋人とかいるの?」 尋ね返す美歌。 「いないよ...けど、そこにいる男たちはみんないい男だよ。好きとかそういうのじゃなくてさ、頼りがいのあるっていうかね!」 にっこりと笑う黎子。 「嵐川さんがそう言うほど...私、何を疑って...」 ふと後ろの窓を見るといくつかの赤い光が光っていた。 「!!嵐川さん!あれ!!」 慌てて叫ぶ美歌。
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