「悲運」

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午後6時45分 中は案外整理されており、ベンチや薪ストーブが店内の真ん中に置かれていた。 そして、巨大な熊の剥製が飾ってあった。 「す、すげぇ…」 圧巻される弥彦。 「これって熊野さんが狩ったものですか?」 春菜が尋ねる。 「ずっと昔の話さ…ま、とりあえずかけてくれよ」 秀悟らは木製のベンチに座る。 「今の俺は猟師と火薬店、ま、いわゆる銃砲店のオーナーをしている。…このとおり山の中にあって、俺も時々来る猟師仲間と語るのが生き甲斐だった。だが、二日前に萩野さんって猟師が山で変死体で発見されてから全てが狂った。萩野さんの葬式をしている時に死んだはずの萩野さんが起き上がってな…参列者を襲い始めた…」 重々しい感じで熊野が語る。 「確かに…あれはひどい有様だった。俺も親父と一緒に参列していたが、噛まれたものは死に、そしてすぐに噛まれた者も起き上がり生きている者を噛み付く…無事に脱出した者も猿のような怪物に切り裂かれてな…俺と親父は何とか逃げれたけど…」 智也が呟く。 「…そんなことが」 弥彦が下をうつむく。 「そして町はわずか一日待たずして崩壊。山間演習に来ていた自衛隊員が指揮をとって生存者を体育館で保護したが…何やら怪物が現れて全滅したというらしいし…俺も何とか逃げ切って生存者を探したが中々いなくてな…会ったのは君らと同じ制服を着た男だけだった…確か…司馬…と言ったかな…」 熊野がぼんやりと思い出す。 「司馬がここに!?」 秀悟が思わず声を張る。
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