「悲運」

23/25
前へ
/365ページ
次へ
秀悟らが家へ戻り数十分後。 熊野銃砲店前。そこには、二台の車が止まっていた。 一人は熊野秋蔵。そして、向かいには白衣を着た男が立っていた。 そうタケミカツチである。 「お会いできてよかったですよ。熊野さん」 タカミカツチが呟く。 「あんさん、何者じゃ…」 秀悟等の言葉を思い出し警戒する熊野。 「おっと、自己紹介を忘れましたね。私はタケミカツチとでも名乗っておきましょう」 おじぎをする。 「で、タケミカツチさんがここに何の用じゃ」 「簡単ですよ。あなたの持っている最高傑作」 アタッシュケースを車から取り出し、中身を開ける。 中には100万円ほど入っていた。 「それを買い取りたい。これは前金です…」 「なんのことかさっぱり分からんの…」 熊野がアタッシュケースを返す。 「とぼけても分かってるんですよ。かつて「伝説の武器商人」「死神」と言われた熊野重兵衛秋蔵さん」 にやりと薄ら笑いを浮かべるタケミカツチ。 「お前…どこでそれを…」 歯ぎしりをする熊野。 「我々の情報網を甘く見てもらっては困るのだよ」 「断る!わしは足を洗った…武器売人としての熊野重兵衛秋蔵は死んだのだ…」 「…そうですか。では…交渉決裂というのとで…いいですよねぇ!!?」 言い終わるより先にタケミカツチが熊野の胸ぐらを掴む。 「なっ!?お、お前は…何者?」 じたばたと抵抗するが無意味であった。 「…世界を統べる者。かな」 にこりと笑う。 「くっ、離せ…あの銃は…渡さない…」 こっそり後ろのベルトからナイフを手にとり。 「だから!死ね!」 ナイフを胸に突き立てる。
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加