「白壁」

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5月21日 午前0時10分 「黎子さん…大丈夫ですよ…」 華江が黎子に寄り添う。 「ありがとう…少し痛むだけだ」 お腹を押さえる黎子。 「…委員長ですら返り討ちにするその怪物…どんだけの力持ってやがる」 光輝が呟くと弥彦が返す。 「あの怪物、刀と同じくらいの強度の爪と、銃弾すらまともに受けない身体をもってやがる…ホントに化け物だありゃ…」 「…そうか」 素っ気なく返事をすると光輝は再び黙り込む。 「黎子…」 心配そうに呟く春菜。 「大丈夫だよ。意識はあるし…何より強い女だ黎子は。そう…だよな?」 秀悟は黎子に尋ねる。 「その通りだ…骨の1、2本折れても問題はない…」 と、強がってはいるが身体は確実に悲鳴をあげている。 やがて、住宅街を抜け、町の中心部へ辿り着く。しかし、明るいのはゾンビの赤い眼の眼光と燃え上がる車や家だけだった。 「相変わらずヒドい有様だ…」 秀悟が呟く。 「あぁ…もうここは垣根町じゃない…ただの地獄だ…」 社長が運転しながら呟く。 「武器も殆どが家に置いてきてしまったし…今より慎重にいかないと」 華江が呟く。 「そうだな…それにはまず、黎子の治療が先決だな」 車は、公民館前を通り抜け脇道に入っていく。看板には「この先垣根病院」と示されていた。
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