「白壁」

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「君は?」 智也が尋ねる。 「僕は諏訪山 巧。ここの医者なんだけど…ご覧の通り僕以外のスタッフ、患者…全て奴らの仲間入りさ」 巧が首をかしげる。 「やはりここも…そうだ!そんなことより、急患なんだ!怪物に腹を貫かれたらしい…」 智也がベンチの影にいる黎子達の元へ巧を連れていく。 「医者の方ですか?」 華江が尋ねる。 「貫かれる…怪我人はこの人かな」 黎子の横にしゃがむ巧。 「先生…すみません。この傷…助かるだろうか?」 黎子が巧に尋ねる。 「…じゃべらないほうがいい…少し制服をめくってくれないか?」 「あぁ…」 黎子が傷口のところをめくる。 「…」 懐中電灯を照らし、傷口を観察する。 「先生!!黎子さんは…大丈夫なんですか?」 華江が今にも泣き出しそうな顔で呟く。 「…急所は運よく外れてる。傷自体は深いけど、僕の腕で何とかできるくらいだ…急いで手術すれば大丈夫だ」 聴診器を外し、華江に話す。 「そっか…よかった…」 安堵する4人。 特に華江の顔には嬉し涙がこぼれていた。 「院内のゾンビは、あらかた射殺してある。急いで2階の手術室へ運ぼう」 そう呟き、近くにあった担架を持ってくる。 そして、智也と二人がかりで乗せる 「せーのっと!」 「…社長…ここに一人…残しておこう…秀悟らが来たら知らせるために…」 黎子が力なく呟く。 「分かった…なら、俺が残ろう。美歌さんと華江さんは黎子さんを頼む」 2人に黎子のことを任すことにした。 「わ、かわりました…早く合流して2階に来てくださいよ!」 美歌は社長にそう呟き、エレベーターで2階へ上がっていった。 「…黎子…頑張れよ…」 ぼそりと呟き、ベンチに腰をかける智也。 既に時刻は0時30分を過ぎていた。
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