「白壁」

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2階 手術室 「…では、先生…お願いします」 黎子が呟く。 「手術といっても傷ついた内蔵の治療と傷口の縫合だけだから。気楽に構えてくれ」 巧が呟き、麻酔のスイッチを入れる。 そして、少しずつ黎子は眠りにつく。 「…さて、やるか」 消毒された傷口にメスを当て、執刀が始まった。 2階 手術室前廊下 手術室の前のイスに華江が祈るように座っている。その隣には美歌が座っていた。そして、手術中のランプが付く。 「黎子さん…」 改めて祈る華江であった。 「華江、大丈夫。先生を信じよう」 美歌がなだめていると、階段から足音が聞こえる。 「華江!美歌!」 智也、そして、春菜と弥彦、秀悟が駆けつけたのだ。 「黎子の手術は始まったのか」 弥彦が呟く。 「えぇ…生きている医者がいて「助かる」と言ってましたが」 少し不安そうな顔を見せる華江。 「…黎子なら大丈夫だ。彼女は誰よりも意思が強いからな。信じて待とう」 秀悟のその言葉に華江は首を縦に振った。
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