「白壁」

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午前2時40分 光輝は一人診察室に立ち尽くしていた。 どこを歩いてもゾンビの死体と荒れ果てている院内だけがその目に焼き付いていた。 「…ここも…」 診察室には「小児科」というプレートがかけられており、ぬいぐるみやポップ調のカレンダーがかけられていた。しかし、今ではそれさえも不気味さを醸し出していた。 「医者と幼い子ども…ここにいるべきはずの存在…だが、虚ろだな今は」 ベッドの上に置いてあるぬいぐるみを手にとりぼやりと呟く。 「…」 そして、何も言わずに手にしたぬいぐるみをベッドに戻す。 すると、診察室の窓から音がする。 「…倒し損ねたか」 光輝が窓に向かうと、そこにはゾンビが1体、窓を叩いていた。 まるで、助けてくれと訴えかけるように。 「仕方ない」 そう言うと窓ガラスを少しだけ開ける。 もちろんゾンビの腕が隙間から入ってくる。 しかし、光輝はすかさずショットガンの銃口を窓から出す。 「…」 そして、無言で引き金を引く。 ゾンビは頭部に散弾を浴びて絶命した。 「…戻るとしよう。何か収穫があると思ったが得たものは何もなし…か」 そう言うと、ショットガンに弾を込めて診察室を後にした。
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