「白壁」

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2階 特別室 「…」 黎子は相変わらず眠りについている。 まだ、麻酔が残っているためであった。 「黎子さん…」 安心しきった華江が横に座っている。そして、智也と美歌、弥彦、巧が室内のソファに腰をかけていた。 秀悟と春菜がいないのは廊下で見張りをしているからだ。 「先生。ほんとに何て言ったら…」 春菜が呟く。 「いいんですよ。ここ最近、患者が来ても誰も救えなかった。久々に人を救うことができて僕も安心できたよ」 にこりと微笑む巧。 「なぁ、先生さんよ。事件が起きてからずっとここに閉じこもっていたのかい?」 弥彦が巧に尋ねる。 「僕はずっとここに立てこもっていたよ。未知のウィルスが発祥し、ゾンビになった患者、スタッフ、上司も殺したよ…」 悔しそうな顔をする巧。 「…だからここにはスタッフや他の患者の死体が…」 理由に納得する美歌。 「だけど、院内のゾンビをどうやって1人で?」 智也が尋ねる。 「簡単さ」 そう言うとソファから立ち上がり、室内のロッカーを開け、何かを取り出す。 「これのおかげだよ。これでもアメリカに留学していた時から狩猟を趣味としててね。ゾンビを撃つのは最初、ためらいはあったけど…」 その手には狩猟用のライフルを持っていたのだ。
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