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午前10時30分 2階 研究室隣の医師詰所
「…ふぁー」
少し横になって仮眠をとっていた巧が目を覚ます。
「もうこんな時間か…少し寝すぎたかな」
あれから朝の7時くらいまでずっとウィルスの特性について資料を探したり実験を行ったりしたが大きな情報は得られずにいた。
机には膨大な量のファイルが置いてあった。
「ここ連日…特に大きな情報はなし…か…」
寝ぼけながら、給湯室へ向かおうとすると、机に足をぶつける。
すると、山積みになっている資料が床に散乱する。
「…あちゃー」
片付けようとしゃがむと、何かを主張するように1枚の新聞記事の切り抜きが出てくる。
「ん?なになに…ウィルス研究所襲撃事件…あとで読んでみるか」
その新聞記事をソファにどかすと、せっせと資料の山を机の上に片付けていく。
「これでよしっと…」
気を取り直して給湯室へ向かう。
「黎子さんは大丈夫だろうか…」
見た目ほどひどい怪我ではなく、血液検査をしてもウィルスの検知がなかったから問題はないと思われるが…
コーヒーをマグカップに入れながらそんなことを心の中で呟く。
そのコーヒーをソファまで運び、先ほどの記事を見ようとしたときだ。
「コンコン」
研究室のドアがノックする音がする。
「誰かな?」
マグカップを机に置き、ドアの方へ向かう。
「はいはーい」
急いで扉を開ける。
「先生!起きてましたか?」
華江が息を切らした顔を覗かせる。
「大丈夫だ。それよりそんなに慌ててどうしたんだい?」
「黎子さんが…目を覚ましたので」
にっこりと笑いながら呟く。
「わかったすぐに向かうよ。先に戻っててくれ」
華江を先に部屋へ向かうように言うと、先ほどの新聞記事を白衣のポケットに入れ黎子がいる特別室へ向かった。
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