「白壁」

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「お前!!」 弥彦が反射的にタケミカツチに殴りかかる。 「まったく...君は相変わらず...」 殴りかかるものも、タケミカツチの体をすり抜ける弥彦。 「あれっ!?」 勢い誤り弥彦のパンチは空振りする。 「たまには人の話を最後まで聞くのだな」 「...ホログラフィー」 華江が呟く。 「その通り。ここにいるのは実在する僕ではない。いわば分身みたいなものだよ」 ホログラフィーのタケミカツチが呟く。 「さて、僕がこんな姿をしてまでここにいるのは、皆さんにお伝えしたいことがあってねぇ...先ほどの新聞記事にもあった通り、国立のウィルス研究所を襲ったのは僕。いや、正しくは僕ら。かな。ううん...僕たちだった。と言ったところか」 「やはり...その組織ってのはどのくらいいるの?」 春菜がすかさず質問する。 「さぁね...僕はもうその組織を抜けたしさぁ」 「抜けた?どういうことだ?」 智也が呟く。 「...単純だよ。この世紀のウィルスを僕だけのものにしたいのさ。このウィルスで人々を混沌に陥れ、世界の王になるのさ...その計画のために奴らを...組織を利用したにすぎないのさ」 狂喜に満ちた顔でタケミカツチが呟く。 「...狂ってる」 美歌が呟く。 「なんとでも言えばいいさ...アヌビスは、人類の進化を...支配する!君達が逢ってきた、怪物の数々、それらも全てアヌビスの力。そして、アヌビスに選ばれた人々の行く末。どうだ?素晴らしいと思わないか?」 「思わないな」 秀悟がきっぱりと呟く。
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