「惨劇」

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「さて、着いたぞ…」 バスが垣根高校に近づく。 「やっと戻ってきた。俺は都会の喧騒より、ここが落ち着く」 秀悟が呟く。 「お前なぁ…夢とかないのかよ」 笑いながら軽く突っ込む弥彦。すると。 「ガクン!」 「なんだ?」 バスが突然校門の前で停車したのだ。 「…これは一体」 垣根高校は市街地の団地のさらに上にある。普段から静かではあるが、今回は様子がおかしかった。 校門の前で炎をあげる乗用車、止まったままの救急車。そして、何故か開きっぱなしの校門。 「君たちはここで待機してなさい。先生は職員室で他の先生と合流する」 そう言うと担任は一人、駆け足で職員室へ向かった。 ざわめくバス内の中、秀悟が弥彦に話しかける。 「校門の前で事故ってのも妙だよな…救急車が止まりっぱなしってのも」 「確かにおかしい…」 弥彦が呟いてると。 「弥彦もそう思う??」 「な、なんだよ!春菜かよ。いるならいるって言ってくれよ」 大津春菜。垣根高校の生徒会長で秀悟の幼馴染みだ。男子生徒から意外と人気がある。 「あぁ…普通なら有り得ないことだからね」 秀悟は冷静に考えていた。どうして救急車が止まったままなのか。車が燃えるほど激しい事故だったのか。と。 「秀ちゃん…」 春菜はキョトンとした顔で秀悟を見つめる。 「あぁ、すまない。考えすぎてた。今は先生が戻るのを待とう」 「それもそうだな!おーい!大富豪でもやろうぜ!!」 弥彦の掛け声で数人が手をあげる。 「私もー!」 春菜も元気よく手をあげたのであった。 「…何もなければいいが」 秀悟は考えつつも、今は何事もないことを祈るしかできなかった。
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