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「まだやるか矢崎!しつけぇぞ!」
「うっせ、帰ってママのおっぱいでも吸ってろや」
矢崎&木場山、そして、弥彦が対峙する。
お互い疲れきっていた。
「へ、吸ってやるさ。お前をノシた後でな!」
弥彦が矢崎に殴りかかろうとすると。
「そこまでだ!」
凛とした一喝が車内に響く。
「…黎子さん」
弥彦が殴るのを止め、声の方を向く。
「そんなに、殴りたいのならボクシング部へ入部するんだね」
仁王立ちで弥彦を睨み付ける。
嵐川黎子。クラス委員長兼薙刀部の部長でもある。
彼女が本気で怒ったら止められるのは司馬くらいだというほど武芸に長けている。
「矢崎!木場山!お前らも小さいことでいちいち因縁つけるな!」
「…」
黙りこむ二人。
「分かったら先生が戻るまで待機してろ。以上!」
「ちっ、網川。覚えてやがれ。あとで、その達者な舌を引っこ抜いてやら」
そう言うと二人は座席に戻る。
「ふん!その台詞そのまま返してやる」
弥彦もそう呟き席に戻ろうとする。
その時…
「おい!生徒だ!」
運転手がバスのドアを開ける。
「…た、助げて」
男子生徒は衰弱しており、肩から血が流れていた。
「沖田君じゃないか!」
生徒に吹奏楽部部長の外川が駆け寄る。
「どうした!?しっかりしろ!!井田先生!」
「…!どうしたの!?」
肩にかけての傷を見て井田は驚きを隠せなかった。
「昨日、町で…人が人を…襲い出した…みんな、殺された。町の人達…避難してきたけど…結局ダメ…自衛隊の人も死んだ…俺、視聴覚室に隠れてたけど、誰も来なくて。で、ふと外を見てバスが見えたから…現状を知らせようとして出てきたけど…この有り様…ですよ」
肩からは血が流れ続け止まらない。
「分かった!沖田君、もうしゃべるな…」
「今、処置するから…落ち着いてね」
「いや、助からない…俺も…やつらと…ながまに…なる…ころ…」
そう言うと沖田は息絶えた。
「…」
首を横に振る井田。
「沖田!!!どうして…」
涙する外川。しかし、死んだはずの沖田の指がピクリと動いたことに誰も気がつかない。
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