「惨劇」

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「!!」 すぐさま後ろを振り向き、胸ぐらを掴み、窓の外へ投げ飛ばす。 「あいつ、化けもんかよ…」 呆然とする弥彦をよそに、光輝は運転手ゾンビと対峙していた。 「ガァァァ!」 両手を前に出して飛びかかる。 「…しつこい」 近くにあった土産用の木刀を手にとって、頭部に思いっきり降り下ろす。 「…ガゥァ」 ゾンビは頭を割られ絶命した。 「司馬…おまえ…」 秀悟が声をかける。 「あれはゾンビだな。人に噛みつく習性に噛まれた外川が襲いかかってきた。間違いない」 司馬は淡々と説明する。 「ちょ、ゾンビって…映画やアニメのお話じゃねぇの?例えばバ○オハ○ードとか学○黙示○とかよ!!」 弥彦が反論する。 「勝手に解釈しろ。だが、俺はゾンビと決めつける。一応、頭が弱点だ。あとは俺みたくすごい力で何かに叩き付けるか…」 「…」 黙る弥彦 「それと勘違いするな。俺はゾンビ共が読書の邪魔をしたから潰しただけ…」 だけだ。と言い切る前に司馬が前方の大通りを見つめる。 「おい、どうした??」 秀悟が尋ねる。 「お前ら、その女を連れて早く校内に避難した方がいいかもな」 光輝が指を指すと、どこから来たか。住宅街の方からゾンビがゾロゾロやってきた。 「恐らく、血の匂いにでも釣られたんだろ」 「…秀悟、春菜を頼むぜ」 弥彦が秀悟に話す。 「弥彦?」 「俺は護衛だ。それに…いや、今はいいから早く春菜を!」 「分かった…」 そう言うと秀悟は春菜を背負う。 「…網川。これをくれてやる」 光輝は木刀を弥彦に投げ渡す。 「お、おう。ありがとさん。けど、お前はどうすんの?」 木刀を受け取り弥彦が尋ねる。 「俺は別の道を探す…それに、腕っぷしには自信がある」 「ま、まぁ…否定はしないぞ」 「だから、さっさと行け!」 そう言うとバスから飛び降り先に校内へ走り去る。 「お、おい!!」 「止めても無駄さ、弥彦行こう!」 3人は邪魔がいなくなったバスの入口に向かう。 「井田先生!井田先生!!」 井田を引っ張る弥彦。 「…あぁ、神様があちらに…神様がカミサマガイラッシャッタ」 訳のわからないことを呟くと、井田は突如バスから降り、ゾンビの群れへ走り出した。 「先生!」 秀悟が叫ぶが、井田先生はゾンビの群れの中へ消えてしまった。 「秀悟…行こう」 「あぁ…」 春菜だけは何がなんでも守る。この時、秀悟の心に決意が芽生えた。
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