「対峙」

4/8
前へ
/365ページ
次へ
「黎子!そのまま耐えていてくれ!」 秀悟が叫ぶと塩酸のビンを怪物の背中あたりに投げつける。 「グギュルルルル!」 苦しむ様子の怪物。   「この野郎!黎子を離せよ!」 続けざまに素振り用の木刀で外皮が爛れた部分を殴り付ける。 「グギュルルルル!」 丈夫な外皮を剥がされたのか、かなりダメージを与えているようだった。 「ブェルギャァ!」 そして、力を失ったのか、薙刀を押し付ける力が弱まった。 「どりゃ!」 隙をついて脱出する黎子。 「黎子、大丈夫か?」 「あぁ…なんとかな…それより、こいつどうするんだ?正攻法では勝てないぞ」 「だから、作戦がある。この爛れたところを薙刀で突き刺しておいて動きを封じておいてほしい」 黎子がそこを見ると、柔らかそうな肉質が見えた。 「承知した!!あとは、秀悟、頼んだ!」 薙刀を思いっきり高く降りかざし… 「グサッ!!」 ナイフの部分が巨大ミミズの肉に食い込む。 「グビュゥゥゥ!!」 さっきよりも苦しんでいるようだ。 しかし、巨大ミミズも負けじとジタバタしている。 「長くは持たない…早く頼んだ…」 黎子は一生懸命薙刀をおしつける。 「…閃光弾と余った火薬、マッチを…よし!」 秀悟はこれらを試験官に投入し、導火線に火をつける。 「ほら!ミミズ野郎!ご馳走だ!」 巨大ミミズの口の中へ向けて放り投げる 「黎子!逃げろ!!」 秀悟の合図で薙刀を離し、黎子と秀悟は巨大ミミズとは反対方向へ飛ぶ。 次の瞬間。 「ドガン!!」 ミミズが爆発し、音を建てて地面に倒れこむ。 「ハァ…ハァ…やったようだ」 秀悟は疲れきっていた。 「…まったく。こんな化け物をよく倒せたな…秀悟、君は立派な男だ」 黎子が秀悟に呟く。 「いやいや、黎子がいなかったら勝てなかった…よ」 「秀悟!!」 道場に避難していた弥彦、華江が春菜が駆け寄る。 そして、春菜は… ギュッ… 思いっきり秀悟を抱き締める。 「…お、おい。春菜?」 突然のことにきょとんとする秀悟。 「また無茶して…心配かけないでよね…」 春菜の目からは涙が出ていた。 しかし、倒れたはずの巨大ミミズが動き出したのには誰も気がつかなかった。
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加