休息

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「あ、大丈夫です。そんなに気にしないで下さい。本当に大丈夫ですから…それより昨夜の件なんですが」 昨日の件。それは魔術協会からの指示その内容は朔弥さんの口から直接聞く事になっているのだが、昨日棺から朔弥さんも魔術協会の一員だと聞かされた。 「放課後大丈夫ですか?予定とか」 ーーーないから大丈夫。それにあったとしても。 魔術協会の指示を守らなければ命の保証は無いと母の手紙に綴られていたし、先ずは話を聞かなければ話が始まらない。 放課後。 棺に連れられ九条院家を訪れると朔弥さんは前回と同じく庭の手入れをしていた。 「ただいま。お父さん」 お帰りと棺に歩み寄る朔弥さんが深々と僕に頭を下げた。慌てて頭を上げて下さいと朔弥さんに声を掛けたがなかなか頭を上げてくれない。 「…ありがとう、銀君。それから先に謝っておく、すまない」 これから僕が足を踏み入れる世界がどんな危険なものなのか僕はまだ知らない。けれど自分で選択した結果なのだから朔弥さんが頭を下げる事ではないのだ。 「では本題に入ろう。これから銀くん並びに真祖には死穢(しえ)の掃討の任について貰う事になる。今回は正確に言うと死穢もどきの魔術師なのだが」 そもそも死穢とはなんなのか。読んで字の如く、死の穢れを撒き散らす人ならざる人。つまりは化物や怪異を指すらしい。 という事はだ。 「ああ。吸血鬼もそもそも我々魔術師には死穢として認識されている、ある例外を除けば。そもそも吸血鬼とは天災レベルの魔術…いや魔法を操る真祖と称される者もいる。一般的に名の知られている者の転生前の名前を挙げるならヴラド・ツェペシュ、ジル・ド・レイ、エルゼベエト・バートリあたりか。最も今名が出た者は封印されてはいるが」 どうやら串刺し公に救国の英雄、古い小説の女吸血鬼のモデルにもなった残虐な伯爵夫人は本物の吸血鬼だったらしい。という事はだスカーレットはもしかしたら有名人なのかもしれない。 「話が逸れたな。これが今回の標的の資料だ。頼りない情報しか記載されていないが」
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