汚れ仕事

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『し、シロ。聞こえておるかの!?』 そんな馬鹿でかい声出さなくてもちゃんと聞こえてるよ。と返し、携帯電話という文明の利器をおっかなびっくりしながら扱うスカーレットの姿を双眼鏡で捉えた。 ゲームセンターなどが数多く存在する一角の廃ビルの屋上に不法侵入している僕は架の姿を双眼鏡で探す。 『あ。お兄ちゃん。スカーレットは大丈夫そう?』 架、正確には式神の架の姿も無事に捉える事が出来た。予想通り人は疎らながらまだ馬鹿な中高生は遊び歩いているようだ。 2人の位置を確認した僕は2人からの連絡を待つ間、人気のない路地裏やら残業終わりのサラリーマンの姿をなんとなく目で追っていた。 『も、もしもし!シロ。何か見つけたか?』 スカーレットからの着信で腕時計を見ると既に日付が変わっていた。一日目なのだしこれ以上は無駄だと判断した僕は2人に帰るように指示し、廃ビルから降りた。 そして宿泊先に向かおうと携帯をポケットにしまい歩き出すと小さい居酒屋から出て来たサラリーマンの集団と出くわしたのだが。 「おい、モヤシ!これ位でダウンしてんじゃねーよ!次行くぞ次!」 「うっ…ぷ。は、はい…」 飲み屋が密集する狭い路地という事もあり数人のサラリーマンの会話が聞こえて来た。どうやら仕事終わりで飲みに来たらしいのだが、モヤシと呼ばれた線の細いサラリーマンが先輩にいびられている。 「知ってっかー!こいつ24にもなってまだ童貞だってよー!!」 「ぎゃはは!!マジかよお前?今時その歳まで童貞守ってるやつなんかいんのかよー!」 見る間にモヤシ呼ばわりされたサラリーマンの顔が赤くなる。そして先輩社員に軽く小突かれた拍子に鞄の中身を路上にぶちまけた。 ーーーー大丈夫ですか? 「あ、ああ。ありがとうございます…………く……ども…が……」 僕は目の前に散らばった書類を集める手伝いをしながら確かに聞いた。狂気を孕んだ言葉を。眼鏡の下の死んだ魚のような目を見てしまった。 散らばった書類の中に見つけた名刺の一枚を気付かれないように抜き取りサラリーマンに返す。 「おおっと。ごめんな兄ちゃん。ったくおめーがトロいから人様に迷惑かけてんじゃねーか」 「お、いたいた。探したぞシロ」 「見ろよ。あんなガキでも可愛い彼女連れてんだぜー?お前も見習えよモヤシ!」
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