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「なんじゃ、あやつら。わざわざ聞こえるように言いおって……それにしてもあれだけ言われて何も言い返さないとは情けない奴じゃの」
飲み屋に消えて行くサラリーマン達を腕を組みながら睨み付けるスカーレットの肩を叩きホテルへと戻る。
結果的に言うと囮を使うまでもなく僕は佐々木と遭遇した。
先程くすねた名刺には佐々木拓道としっかり記されている。どうやら先程の様子だと何食わぬ顔で仕事をしながら犯罪を重ねている様だ。
「成る程。じゃあもう仕事は終わったようなもんじゃの」
「だねー」
ホテルに戻りいきさつを二人に話す。確かに不意をつけば案外容易く決着はつくかもしれない。
ーーーー明日、僕は佐々木の後をつけてみようと思う。もしかしたら自宅に被害者、失踪や家出扱いになっている子達の手掛かりがあるかもしれないし。
二人には呆れられたが被害者が生きている可能性も捨てきれない。
仕事をまだ続けているのなら仕事が終わるまで待ち伏せして後をつければ住居の特定は可能だろうし。
「きっと後悔すると思うけど本当にいいの?」
架の問いに頷くと溜め息が返って来た。
「まさか一人で行く気ではないだろうなシロ?」
勤務先から帰る佐々木を尾行するだけなのだから何も二人がそんなに心配せずともいいのに。
二人の反対を押し切り僕は一人で佐々木を尾行する旨を伝えたのだが。
「分からず屋じゃのシロ!」
「スカーレットの言うとおりだよ!絶対一人じゃ行かせないからね?」
だが二人が僕の意見を聞き入れてくれず諦めて眠る事にした。
一人元気なスカーレットを残して。
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