汚れ仕事

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いっそこれがフィギュアを収納する様なガラス製のショーケースなら良かった。 照明のスイッチを入れると薄暗い青にライトアップされた十を超える人間大のショーケースが目の前に現れたのだ。 それも中身はフィギュアなどではなくホルマリン漬けにされた少女達。 変わり果てた少女達は光を失った虚ろな目で僕達を見ていた。 ーーーーな………なんだよコレ。 「酷い………酷過ぎるよ。こんな……」 ガクガクと震える架が僕の背中に顔を埋める。恐る恐る奥へ進むと更なる惨状が目の前に広がった。 佐々木の欲望を満たす為に設けられた手術台のような拘束具に医療用の注射器、メス、ビデオカメラ。そして飾られている少女達にそっくりなフィギュアが並べられた棚。 「そんな……!」 それまで目を伏せていた架がフィギュアの一つを手に取り絶句した。 「あいつ…人形に魂を載せ替えて……」 架のその一言で理解した。 佐々木は被害者達の魂を人形に乗せ変えて陵虐の様を見せ付けたのだと。 ーーーー………なんとか助けられないのか? 「無理だよ!本来の肉体がこんなになってたら……それに人形なんかに魂を定着させられて……」 ーーーー意識は……生きてるのか? 涙を浮かべながら膝を着いた架には酷な質問だというのは分かる。ただ事実を知らなければならない。 「……生きてるよ。でも生き地獄って言った方がいいよね?こんな死にたくても死ねない状態なら」 例え人形を破壊したとしても黒魔術により強制的に定着させられた魂を破壊する事が出来ないのだと架が補足してくれた。 架の見立てでは仮に肉体が無事だったとしても魂を再び定着させる事は不可能。どうやら黒魔術というのは術者の欲望を叶える為に特化した特異な魔術らしい。 でも僕の力なら、もしかしたら彼女達を地獄から救えるのではないか? 「お兄ちゃん!?何を……!?」 例えその結果、彼女達を殺す形になってもそれが僕にしか出来ない事ならば僕は。
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