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この瞬間。僕は初めて人の命を奪った。それも複数の。
僕はまだ魔術という不可思議な力を知覚出来てはいない。そして霊的なものが見える訳ではない。
でも確かに感じた。
掌から伝わる人形の感情を。僕が触れた時には確かにあった魂が消える瞬間を。人形と魂を繋いでいた歪な黒魔術により形成されていた黒い鎖が弾け飛ぶ光景を確かに見た。
ーーーー約束するよ。報いは必ず、僕が受けさせる。だから……
「お兄ちゃん………」
歩けない状態の架を背負い地下室から抜け出す。架には外で待っていて貰い、僕は灯油の入ったポリ容器とライターを探し出し灯油を地下室に撒くと火を付けた。
ーーーー騒ぎに巻き込まれる前に急いで離れるからちゃんと捕まってろよ。
「……そうだね。分かった」
赤く目を腫らした架を背負いながら急いで惨劇の舞台を離れた。
やはり一人で来るべきだったんだ。
そうすれば妹にこんな思いをさせる事は無かった。
自宅が燃えれば直ぐに佐々木の職場にも連絡は行くだろう。そうなれば佐々木も気付く筈、そして家に戻ることはしないだろう。
ホテルに一旦戻り部屋に架を降ろして僕は一人佐々木の職場に向かう。
「気を付けてね。私の予想では戦闘向きの相手じゃないとは思うけど」
ーーーー行ってくるよ。
「お兄ちゃん!!」
僕が手にかけた少女達の無念を晴らす為、決着を付ける為に。
佐々木を殺す。
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