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未だに消防車のサイレンがけたたましく鳴り響いている。もっとも犯人は僕で通り過ぎて行く警察車両や消防車には申し訳ないが今はそれどころではない。
佐々木の職場へはバスでも電車でも行ける。自宅には一応車もあったが通勤時に使用していない事から移動手段は徒歩か先に挙げた交通機関やタクシーだろう。
会社に着いてから佐々木が現れるまでそう時間は掛からなかった。僕の予想通り家とは真逆の方向へと向かった。
後をつけるとどうやら佐々木は電車に乗り郊外へと向かっているらしい。窓から見える景色に緑が増え、ほとんど人気の無いホームへと降りた佐々木。
進む先の見当がつかないのもそうだが、いい加減こいつの後をただつけているのも限界だ。
ーーーーすいません。
「なっ、なんだよ。あっ…君は一昨日の…」
必死に作り笑顔で佐々木に声を掛けたのだが湧き上がる衝動を抑えきれず体が動いた。
有無を言わさず佐々木を片腕で壁へ押し付け喉を声を出せないように潰す。
人差し指と中指に伝わる嫌な感触、母さんや杭が魔術を行使する際は何かしら言葉を口にしていた。ならばこの判断はきっと正しい。
「が……がっ!?」
間髪入れずに膝を真横から踏みつけるように蹴り、崩れ落ちる前に膝で腹を蹴り上げる。勿論今までとは完全に状況が違う為に全力で一欠片も手心など加える事なく。
ヒューヒューと耳障りな音を立てる佐々木の首根っこを掴み路地裏に引き摺り、目線を同じ高さに合わせて僕は訊ねた。
ーーーーどうして、あの子達にあんな真似をしたんだ?
こんな真似をしてもあの子達が帰って来る訳ではないのは理解している。でも僕は聞かずにはいられなかった。
例え言葉を発する事が出来たとしても納得のいく答えが返ってくる筈がないのに。
ーーーーなぁ、なんであんな事が出来るんだよ?別な方法で発散出来なかったのか?金はあったんだろう?
辛うじて意識を保っている佐々木を掴み起こして殴りつける。それを繰り返し一方的な問答はしばらく続いた。
ーーーー起きろよ。お前が手に掛けた女の子達の数だけ僕はお前を殺し続ける。僕がお前を殺し尽くす。
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