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意識を失った佐々木を叩き起こす為に指の一本を折る。が、反応はない。
そこでようやく僕は気付いた。もう佐々木は死んでいるという事に。
呆気なく。いとも容易く達成された仇討ち。
しかし、まだ足りない。こいつはこんなにも容易く死ぬ事など許されない。
僕は自身の手首に思い切り爪を突き立て引き裂いた。吸血鬼である僕の血を受ければ佐々木は蘇る。不死の存在へと生まれ変わる筈だ。
案の定僕の血の飛沫が佐々木の口に入ると傷が徐々に塞がり佐々木が目を開けた。
思わず笑みが零れそうになるのを抑え僕は拳を振り上げる。
血の泡で真っ赤に染まる拳を誰かに止められるまで一方的な虐殺は続いた。
「そこまでにしておけ。それ以上続けるならシロ、お前はもう戻れなくなる。それにお前が血を分け与えた分の再生力を既に使い果たした此奴はもう……」
ーーーーなら、もう一度…
「止めろ、と言ったじゃろ!まさか杭や架にそんな顔を見せるつもりかお主?それは妾が許さん。いい加減妹思いの兄に戻れシロ。架は泣いて妾に懇願したぞ?お兄ちゃんを止めて、と」
まだ太陽が出ているというのに無理を押して僕を探し出してくれたスカーレット、だが僕は直ぐに手を振り払った。眷属の居場所が特定出来る能力でもあるのだろうか?
「分からず屋め!なら、力づくで止めさせてもらうぞ!」
スカーレットが自らの影から引き抜いた大鎌で僕が止めるより早く佐々木の首を跳ねた。そして僕が言葉を発する前に首筋に噛み付く。
「見ず知らずの他人の為に自分の手を汚す事、傷付く事を省みないのは問題じゃぞ?それは確かに美しい行為かもしれんがお前の事を慕っている者達の事も少しは考えてやれ」
スカーレットに大量に血液を吸われた為か体に力が入らない。ようやく僕の首から口を離したスカーレットが何を思ったか僕を突き飛ばした。
「暗闇の中で少し頭を冷やせ。馬鹿シロ」
その言葉を最後に地面に吸い込まれ落下して行くような感覚に僕は支配される。真っ暗な暗闇が支配する影の世界に僕は落ちて行った。
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