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「………起きろ、シロ。いつまで寝ているつもりじゃ。妾に死体の後始末までさせおって」
気が付くと紅い眼が僕を見下ろしていた。どうやらいつの間にかあの黒に支配された世界から帰って来ていたらしい。
「頭は冷えたか?」
ーーーーああ。悪かったよ……ありがとな。
「フン!礼なら架に言えばよかろう。用は済んだのじゃさっさと帰るぞ」
照れ隠しのつもりなのかふいと僕から顔を背け歩き出すスカーレットに僕は呼び掛けた。
ーーーージャンヌ。
と。
「…何故じゃ?何故お主がその名を知っておる!妾がその名を明かした覚えはないぞ?」
僕はありのまま、暗闇で体験した事をスカーレットに伝えた。
ちなみにだが腕組みをしながら精一杯僕に凄んでいるスカーレットには悪いが全く怖くない。
「そうか。じゃがな、妾はもうその名を捨てたのじゃ」
ーーーーだからって色を名前にする事はないんじゃないか?ジャンヌの方が呼び易いし人間味があっていいと思うぞ?
「ええぃ、喧しい!好きに呼ぶが良い。ただし人前では絶対にその名を口にするなよ?」
ーーーーはいはい。分かったよジャンヌ。
「お主…妾をからかっておるな!?」
ーーーーそんな事ないさ、早く帰りましょう聖女様。
「き、貴様ぁぁぁ!」
顔を赤く染め上げるスカーレットの反応が面白く僕がしばらくからかったのは言うまでもない。
色々と生前の話を聞きたかったが本人が嫌そうなのでそれは止めておいた。
「ホントに心配したんだからねっ!?」
ホテルに戻りお怒りモードの架に深々と頭を下げ、というか土下座させられた挙句に無理難題の報酬を要求されたが一先ず一件落着したのだし良しとしよう。
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