欠落

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欠落

昨日夜の公園で なくした本のページを探していた 何度も震えていた携帯電話に 煩わしさを感じて 擦り切れた感情に茹だった僕は 流れる血を止めるのに必死だった 実のところ 級友の名前すら曖昧で 懐かしむ記憶もない 薄情だって笑うかい 誰かと比べればかわいそうだって言うんだろうね その昔憧れの的だった 賢くて誠実なあの子は 眼に映る全てが嫌になって 学校の屋上から転落死したんだってさ 一心不乱に瞬いておいて やがて消えてしまうくせに 全てが尊いものだと 皆それぞれに嘘をつく 誰かと比べてかわいそうだって 言えればそれでいいんでしょ だったらせめてこの流す涙は あの子のためだということにさせて
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