3人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の力ならやれる!なぜかわからないが自信が溢れてくる。
「今日もダメかー」
鈴木は笑っている。手紙を書いたことで心の整理ができたからだろう。
「そろそろ行くかな。」
鈴木は歩きだした。今日死ぬなんて想像もつかない。いつもと同じ道を歩いていく。
信号が青になり歩き出す。そこで信号を無視したトラックが突っ込んできた。
これだと思った俺は全力で能力を使う。トラックの軌道が変わる。これならぶつかることはない。俺はほっとしている。こんなに簡単に運命を変えられるなんて、これでまた一緒に部活動ができる。あの手紙が俺を完全に変え、俺の魂に鈴木の気持ちが刻まれた。
そう思っていると鈴木はトラックの方に走り出した。どうしてだよ。このままじゃトラックにぶつかるよ!ダメだ。行くな!
もちろん俺の言葉は届かない。どうしてだと思っているとトラックの方向に子供達が遊んでいる。それを助けようとしているんだ。彼は走るのをやめない。ダメだ。やめろー~!!!
どーーん。彼を轢いたあともトラックは止まらない。ガードレールに何度もぶつかってやっと止まった。彼の方に俺は全力で近づいて、聞こえないのは承知で俺は話しかけた。
「死なないでくれ。頼む。俺陸上続けるし、昔の自分に戻るから。頼む。死なないでくれ。」
俺は懇願した。
「それは無理だなー。自分でわかるんだ。」
鈴木が返事をしてきた。
「鈴木聞こえるのか?」
俺は質問した。
「ほっしーなんだろ?わかるよ。死ぬ前にお前と話せて良かったぜ」
笑っている。死ぬのがわかってるのだろうか?ダメだよ。
「俺後悔しないって決めたのにまた後悔してる。頼むからまた俺と一緒に練習してくれ。」
俺はぐしゃぐしゃになった顔で話している。そんな顔を見ている鈴木は
「お前さーもっとはやく素直になってろよ。もう無理じゃん。俺だって一緒に走りたいよ。・・・陸上やってて良かったぜ。」
声がどんどん弱くなっていく。
「急にどうしたんだよ。」
死ぬ前の話みたいじゃないか。俺は言葉を詰まらせた。
「ほっしーに会えたし、あの子供たちを救うことができた。今し、あ、わ、せだ!」
それを言ったあと、手紙の話が出てきた。
「俺が死んでも続けろよ」
俺はやるよ。約束だ!俺は心のなかで叫んだ。もう彼には届かなくなっているからだ。体がみるみるうちに冷たくなっていく。
最初のコメントを投稿しよう!