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[secondstory] vol.1
2013年
11年半、お世話になった事務所を一人で夢だけ抱えて抜けた
ベースと機材を持って通い慣れた東京から千葉の家までの帰路がこんなに長く感じたのは11年半で初めてだった
この時の事は一生忘れない
忘れないためにこの時キャリーカートにグルグルと固定されてたさみしそうなベース2本、機材を携帯で写真に撮っておいた
この日を絶対に忘れちゃいけないと思って
いろんなことが電車の中で蘇って何度も涙腺が緩んだ
感動的な映画、漫画、小説を読んでも全く泣かない自分が涙を止めるだけで必死だった
まだ語りたくない空白の一年間もある
それでも自分が決めた事、一度きりの人生、もう後ろは振り向かないようにiPhoneで音楽を聴きながら胸を燃やした
無理矢理に
それでも帽子を深く被って涙した曲があった
UVERworldの「THE OVER」
やっぱり一番気になってたのは自分らの事で泣かせてきたファンの人達だった
同期達は夢を叶えビックスターになってみんなを満足させてるだろうし幸せにもできてるけどおれは…みんなの幸せを願ってやってたつもりなのに結果は哀しませていたんじゃないかって
一語一句自分に当てはまってしまって
自分の力の無さを痛感した
悔しかった
何度もキャリーカートのゴムが緩んで何回も直してその都度
"おれがこれから歩む道みたいだな"
って少し皮肉さも感じて噛み締めながら20年以上住み慣れた街に着いた
家に着いて親父には報告だけした
強がりながら
「ただいま」
「機材、家に持って帰ってきたから」
たったそれだけ
いつもそばにいてくれて、一番応援してくれてた人
ずっと一人で"子供"の面倒を見てくれてた
おれもその子供
おれをこの世に存在させてくれた人
だからこそ
その一言だった
長年支えてくれててその言葉だけって冷たく感じるかもしれないけどおれはただ、ただ、心配させたくなかった
おれは平気だぞ、おれなんかより弟、妹、姉ちゃん家族、ゆず(愛犬)、そしてなにより自分自身を大切にしてよって
おれのことで落ち込んで欲しくなかった
それだけあの人には守るものがあるから
きっと期待もしてくれてたと思う
湘南に家を買って老後はそこでゆっくり過ごさせてやるって約束もした
でもその親父との約束も自分の夢もおれは何もかも諦めた訳じゃない
人生まだ半分も生きちゃいない
誰もおれの結末を見たわけじゃないだろ
そんな気持ちを込めた
「ただいま」だった
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