場所とりは新人の務め

5/14
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
そう、同じ境遇なわけだし、これでいこう。 さて、彼女はというと、俺の約1メートル左で同じ方向を向いて、曲げた足を左に流すようにしてチョコンと座り両手を左膝あたりに添えて桜の木を見上げている。 新人研修の時に見た紺のリクルートスーツではなく、上はパステルピンク調のジャケットにフリルで飾られたブラウスを着て、 下は膝丈のフレア気味のベージュのスカートから膝小僧が顔を覗かせている。 幾分緊張気味ではあるけど、桜の花を見上げながら微笑んでる彼女を見ると… いいなあ、なんか和む。 こんな子を彼女にできたら… そう、できたら… できたら? あれ? オレのいつもは余計な事まで想像してしまう妄想が出てこない。 海?山?いやいや、ショッピングとかスイーツの店にオレが彼女と一緒に行くとかいう光景が想像できない。 確かにそういう彼女が喜びそうなところは準アキバ系なオレには似合わないし、今の今まで女の子とデートなんかしたこともない。 そう、偶然でも女の子と二人きりになって誰にも邪魔されない時間なんて過ごしたことはないのだ。 オレの経験値と言えば最近はやってないが俗に言う“エロゲー”つまりパソコンの恋愛RPGとかの、男にとって都合の良すぎるあり得ない展開のゲームくらいだ。 もちろんそんなものがリアで役に立つなんて思っちゃいない。 そんな期待をしたい自分もいるが、ここはまず、この場を冷えさせない程度の話をしないと。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!