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「おはよー。イセさんってだあれ?」
「だ――誰でもないよっ」
「ん? その慌てよう、なんか怪しいなあ」
「怪しくなんて」
否定しかけたとき、手の中で携帯が震えた。
早速の返信にそれだけで心臓が高く打つ。彼女に覗かれないよう距離を取りつつ画面を開くと、
『もう登録してある』
「…………」
当然である。
記念すべき初メールが肩透かしな内容になってしまった。
それにしても、と先生からの返信にもう一度目を通す。
期待していたわけじゃない。けれどこうもあっさりだと余計に寂しく感じてしまう。
一言でもいいからメッセージを付け加えてくれてもいいのにな。なんだか私だけ浮かれてるみたいだ。
「なんか顔暗いけど……どうかした?」
「ううん、何でもないよ。ーーあれ、三浦くんは一緒じゃないの?」
「一樹、今日は日直だから」
そっか、と昇降口へと歩き出す。
「そうだ、雪子ちゃん今朝の星座占い見た?」
「見たっ。私、一位だったんだよ」
「みずがめ座だもんね。いいなぁ、あたしなんて七位だよ。中途半端ー」
「ラッキーアイテムは?」
「渋柿」
つい吹き出してしまった。
「本当かよって話だよね。大体そんなもん簡単に手に入らないしー」
今日はツイてない一日になるのかなあ、と欠伸をする。
そこで短い前髪の下の瞳がぱちっと見開かれた。苦笑いを浮かべて私の首の辺りを指差す。
「今日もお休み?」
視線の先に手をやり――シャツ以外の感触のない襟元に私は見る間に青ざめたのだった。
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