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「ほら」
そう言って先生は手を差し出した。
はにかみながら伸ばした手は、重なる寸前に取られる。
「……冷た」
冷気から守るように、そして自分の手で暖めるように、ぎゅっと握り直す。
伝わってくる温度の心地好さに、私はにっこりと笑顔を向けた。
眩しそうに目を細めながら先生が白い息を吐く。
「そろそろ帰ろうか」
夕陽に染まった茜色の浜辺を歩きながら、二人の間で繋がれている手をそっと見下ろす。
あの頃の私は、いつまでもこの手は私だけのものだと、この先ずっと一人占めできるものだと、信じ切っていた。
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