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「嬉しかったのに……先生からメールが届いて、久しぶりに話せるってすっかり舞い上がってたのに、それなのに菅田先生の呼び出しだなんて」 勝手に勘違いして浮かれていた自分が恥ずかしくて悔しくて泣けてくる。 ふるふると小刻みに肩を揺らせていると先生が静かに首を傾けた。 「西島、何か勘違いしてない?」 「してました。まさか菅田先生のところに行くなんてこれっぽっちも」 「用があるって言っただろ」 「ですから行ってきたじゃないですか」 「そうじゃなくて」 先生はゆっくりとした口調で遮り、身を屈めて私の顔を覗き込んだ。 急接近した顔に思わず後ずさる。 「……俺の用はまだ済んでないんだけど」 「え?」 きょとんとする私の方へ白衣を纏った腕が伸びてくる。 細長い指が頬に触れ、びくっと肩が跳ねる。 その反応に先生は小さく笑って親指で優しく涙の跡を拭った。 それから次に形や感触を確かめるように優しく頬を撫でる。 至近距離で向けられる瞳が甘く感じて、突然変わった雰囲気に火が点いたように顔が火照る。 「先生……」 「何?」 「な、何って……」 「西島……顔真っ赤」 からかうように言って私の頬に貼りついた髪を耳へかける。 「……耳も赤い」 指が耳をかすめてくすぐったさに「わっ」と声が出る。 先生は一瞬目を見開いてから困ったように笑った。 「ダメだよ、そんな声出しちゃ。人、来ちゃうでしょ」 あっ、と焦って入口を窺う。 先生は面白そうに目元を緩ませて私の頭にそっと手を置いた。 優しく頭を撫で、やがて肩まで降りてきた手は顔周りの髪を梳き、毛先を指に絡ませる。 私の髪を先生は観察するように眺め、 「髪……綺麗」 掠れた声でそんなことを囁かれ、私はさらに顔を熱くさせた。 たまらずに俯く。 「……どうしたの?」 「……」 「もしかして照れてる?」 笑い混じりに言って、私の頬を指の背でするりと撫でてから先生はようやく離れた。 近くの壁に寄りかかり何も言わずに私を見つめる。 黒い瞳に捉えられて心拍数が駆け上がっていく。
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