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高校生活最後の体育祭を終え、その二日後に迎えた振替休日の朝。 澄み切った青空が照らす室内で私は口元に手を当てて唸っていた。 所狭しと洋服が並べられたベッドの僅かに空いたスペースへ腰掛ける。 どれを着ていったら可愛いと思ってくれるかな。 パジャマの下の胸がきゅっと音を立てた。 待ちに待ったデートの日。 当日着ていく服は先生に誘われた日から考えていたし、これだと決めたものには昨夜にアイロンを済ませておいた。 それなのに土壇場になって揺らぎが出始めてしまった。 先生は大人だ。だから見合うような服を、と思う。 姿見の前に立ち、片っ端から服を当てていく。 持っている服のほとんどがワンピースやスカート。 その中でもなるべく大人っぽくて先生と一緒に歩いていても浮かないもの……。 あれこれ試し、ふと時計を見て悲鳴を上げた。 「もうこんな時間……っ」 大慌てでパジャマを脱ぎ捨てた。 慌ただしくもなんとか身支度を整え、姿見の前に立つ。 後姿もとくるりと回転する。まるで踊るようにフレアの裾がふわりと広がる。 結局選んだのは、あらかじめ選んでおいた白いワンピース。 大人の女性には少し遠い気がするけれど、無地で丈も長いので大学生くらいには見えなくもない。 せめてと千秋ちゃんがしてくれたメイクを思い出してマスカラとグロスを加えると大人っぽさが増したような気がした。 「今度、一から教えてもらおう……」 独り言を呟きながらカーディガンを羽織り、もう一度自分の姿を確認する。 少し乱れた髪に櫛を入れていたら携帯が鳴った。 『着いた。マンション出て右方向の少し歩いたところにいるから』 急いでベランダに出て見下ろす。 少し離れたところに先生の姿を見つけた。 携帯を手に辺りをキョロキョロと見回している。 今すぐ飛んでいきたい気持ちを抑え、いま行きます、と短く返信して玄関に走る。 サンダルを履き、逸る気持ちと高まる鼓動を胸にドアを開けたところで―― 「――花音っ、どこ行くの」 慌てたような女性の声が耳に飛び込んできた。
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