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安藤先生たちの表情がさっと強張った。三人とも言葉もなく互いを見合う。 「なんだ、一色くんも知ってたんだ……そっか、やっぱり……」 その傍らでは女子生徒が喜びを隠し切れない様子で何度と頷いている。 すべてを覚悟して放心していたら、突然葵くんが吹き出した。 わずかに上半身を倒して、あはは、と珍しく白い歯を覗かせ笑う。 それは久しぶりに見る無邪気な笑顔だったが、この場にそぐわない姿に全員が石のように固まった。 ひとしきり笑ったあと彼は満足げに大きく息を吐いた。そして、 「――なんて、言うと思った? 小野田さん」 名指しをされた彼女は途端に頬をひきつらせた。それから声を振り絞るように、 「……どういうこと」 「すみません、安藤先生。皆して勘違いしてるからおかしくてついふざけました。たしかに二人で商品を見ていましたけど、とてもつき合っているようには見えませんでした」 だって、と彼は私の斜め後ろまで来ると身を屈めて私と同じ高さで視線を合わせた。 「雪乃先輩は僕とつき合ってるんだもんね」 驚きのあまり誰もが声を失うなか激昂したような女子生徒の叫び声が響き渡った。 「何言ってるの!? ふざけないで!!」 「ふざけるも何も事実を言ったまでだけど。僕もモールにいたんだよ」 「そんなの嘘、一色くんはいなかった!」 「まるで最初から最後まで見張ってたみたいな言い方だね」 声を詰まらせた彼女から目を外して彼は身体を起こす。 「あの日、僕と先輩はそのモールへデートにいきました。そこで偶然一人で買い物をしている氷泉先生を見つけたんです。なんだか険しい顔をしているので声をかけたらどれを買おうか悩んでるって言うので一緒に見てあげることになったんです」 「でも……小野田さんが言うには二人きりだったと……」 近藤先生がそう指摘するが、 「僕、用があって途中で抜けたんですよ。それで二人になったときに丁度見かけたんじゃないですか」 「でたらめで言わないで!」 「事実だよ、先輩が欲しがってたルームウェアを内緒で買いにいったんだ。氷泉先生に声をかけたのはその目的もあったんです」 「嘘……、嘘です、先生たち信じないでください!」 「しつこいな。二人が交際している証拠でもあるの?」 「だって二人とも変装してるじゃない!」 安藤先生の手から奪うように写真を取った彼女はそれを葵くんの眼前に突きつけた。
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