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「ほら! 知ってる人にばれないようにしてる。すごく仲良さそうだったし、学校でも二人でいるところ何度も見てるもん!」 「夏に麦わら帽子を被るのも休日に眼鏡をかけるのもごく一般的な装いだよ。それに氷泉先生は担任なんだから親しくて当然だし、用があれば二人で話すこともあるよ。それとも教師と生徒は二人で話しちゃいけないの?」 「……それは、」 言葉が尽きたのか彼女は押し黙った。けれど葵くんを見る瞳はまったく納得していない。 「そんなに信じられないなら……」 携帯を取り出した彼は前へ出ると女子生徒と近藤先生たちへ画面を向けた。画像だろうか、指をスライドさせる。 「……あ、これですよ。プレゼントしたルームウェア。ちなみにここは雪乃先輩の家です」 葵くん、と私は思わず声をかけた。 「どうして……」 「信用してもらうには手っ取り早いかなと思って」 今度は私と氷泉先生にまで見えるようにして画像を表示させる。 そこには、自宅や浜辺、文化祭など様々な場所で撮った私と葵くんのツーショットが映し出されていた。 中には花音ちゃんや小夜さんも一緒に撮ったはずの写真もあったがトリミングされたのか二人の姿はきれいに消えていて、見事に二人きりで撮ったような仕上がりになっている。 ソファで眠っている私や、そんな私に顔を寄せる葵くんの写真もあった。 「これ、いつの間に――っ」 「ごめん、つい」 「ついじゃないよ、消してッ」 「えー、嫌だよ」 「消してってば!」 伸ばした手はあっさりと交わされる。 ふと彼の背後に能面のように無表情な氷泉先生の姿が目に入って狼狽えていたら、近藤先生が割って入った。 「西島さんと一色くん……あなたたち本当に交際しているの?」 「でなければ雪乃先輩のこんな寝顔、撮れませんよ」 「……そうね、家を行き来する仲なわけだから……」 でも、と女子生徒が引き止めるように呟く。 「仲は良いのかもしれないけど……二人の写真が多いからってつき合ってるとは限らないんじゃ……友達でも通ると思います……」 「それ小野田さんが言うの?」 「…………」 「まあ、いいや。そこまで言うなら……」 困ったように笑った彼は私に振り向くなりおもむろに身を屈め、 「え……一色、」 焦ったような氷泉先生の声を無視して――私の頬にそっと口づけた。
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