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「……表沙汰にするために仕向けたのか」 「正解」 「どうしてそんなこと」 「順に話しますから」 宥めるように言ってソファに深く背中を預けた彼は私たちを交互に見てから始めた。 「小野田さん、夏にショッピングモールで二人のことを見かけたって話してたよね。雪乃先輩のこと知らなかったらよかったんだけど、あいにく見覚えのあった彼女は教師と生徒が二人きりで買い物をしている光景に関係を疑った。そして二人の交際を裏付ける証拠を手にいれようと探りをはじめた」 「葵くん……どうしてそんなことまで知ってるの」 「順に話すって言ってるのに。まあいいや、それは本当にたまたま。小野田さんが友達と話してるのを偶然耳にしたんだ。だけどそれがなくてもいずれ気づいてたと思うよ。それほど彼女の言動は目についた。まあそれも僕が雪乃先輩のことを見ていたからこそなんだけどね。 話を戻すけど、探るといっても事が事だけに人に話を聞いたりとかはなかったみたい。ただ休み時間や放課後なんかは二人の周りをうろついてた」 思わず先生と顔を見合わせた。彼も困惑しきった顔つきだった。 「その様子だとまったく知らなかったみたいだね。――だけど思い出してみて。文化祭で二人の写真を撮ってくれたのは誰だった」 背中が冷たくなるのを感じた。 コピー室から出たところで一緒に写真を撮りたいとせがむ私のために先生が声をかけた相手。肩で弾む内巻きの髪が可愛かったのを覚えている。――小野田という女子生徒だった。 「文化祭の最中に一階に行く用なんてそうないよ。廊下の角で身を潜めている理由もね」 「……でも、すごく親切に写真撮ってくれた……」 「そりゃあ親切にもなるよ。決定打を掴むチャンスなんだから。それも僕のおかげで不発に終わっちゃったけどね」 「じゃあ……一色があの場にいたのって」 賢い生徒にするみたいに葵くんは先生へ微笑みかけた。 「二人を見張っている彼女を見張りながら、雪乃先輩たちがへまを踏まないかも窺ってました。暇でしょう?」 それでは葵くんが現れたのも私との関係を匂わせるようなことを言ったのも、すべて計算の上だったのだ。
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