11

23/28
前へ
/424ページ
次へ
「だけど氷泉先生も雪乃先輩も学校ではそれなりに警戒してたのか、二人で話している現場を目撃こそすれ親密とまでいかない姿に小野田さんは相当やきもきしている様子だった。リークするには信憑性のある証拠が必要不可欠だからね」 不穏な発言とは裏腹に葵くんは楽しげに笑う。 「このまま証拠を押さえられないでいれば彼女の中の疑惑も関心も薄らいでいく、いずれフェードアウトするかなって期待してたんだけど……残念ながらそうはならなかった。執着さえ感じた。だからちょっと探ってみたら……氷泉先生に理由があったんですね」 え、と先生が眉根を寄せた。覚えがないのかそのまま黙り込む。 呆れたように葵くんは首を倒した。 「まさか覚えてないんですか。以前に小野田さんから告白されたこと」 「…………あ」 「最低ですね。とにかく先生はそのとき生徒は論外とかそういったことを言って断ったんです。ところが蓋を開けてみればその論外のはずの生徒と仲良くお出かけしてるんですから面白くないですよね。そういう私怨も手伝ったわけです」 隣を見る。 気まずそうな顔をして私の方を見ようとしない。 「とはいえ確実な証拠は手に入らない。それどころか先輩とつき合っているのは僕と聞かされる。それでも彼女の中の疑惑は消えない……。そうこうしているうちに直接先輩に突っかかるほどにもなっていたから、このまま野放しにしていたらどんな行動にでるか予測できないと判断して、ならいっそのこと疑惑を晴らす機会を与えてしまおうと考えたんだ」 「それであの写真を……でも一色が渡しても、」 「直接渡すわけがないじゃないですか」 おかしそうに彼は微笑んでみせた。
/424ページ

最初のコメントを投稿しよう!

351人が本棚に入れています
本棚に追加