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「僕が撮ったのは一枚だけだけど、それでも他人から提供されれば小野田さんにとって決定打になる。だから南から小野田さんへ送ってもらったんだ」
「南くんに?」
「南って誰」
「僕の隣のクラスの男子ですよ。ちなみに同じ図書委員」
「ああ、あの短髪の……え、じゃあその南に俺たちのこと知られたんじゃ……」
「はい。協力してもらうには二人のことを話す必要があったので。でも心配することないですよ、二人の関係には薄々勘付いていたみたいですから。事情を説明したら、そういうことならと乗り気で引き受けてくれました」
あまりにもさらりと言うものだから聞き流すところだった。
「――ええっ」
「そうでなきゃ頼まないよ。いつだったかな、雪乃先輩とつき合ってるのかって聞いてきたことがあったんだ。そうだけどって返したら釈然としない顔してるから何か知ってるのかと思って色々とふっかけてみたら、氷泉先生とつき合ってるはずなのにってこぼしたんだよ」
「……どうして」
「雪乃先輩が氷泉先生のことを好きなことは一年のときから気づいてたんだって。でも相手が相手だけに報われないんだろなあって勝手に胸を痛めてたらしいんだけど、夏頃に学校で二人を見かけたとき妙に余所余所しいのを見てピンときたみたい」
「ピンって……」
「なんでも二人の姉がいて少女漫画に囲まれた生活してるせいでそういう勘が働くらしいよ」
「……たかが勘だろ」
「されど勘でもあるんじゃないですか。こと雪乃先輩は顔に出やすいし、もしかしたら先生の方も表に出てたのかも」
「けど……信用できるのか。このことを誰かに話したり、」
「それはないです。現に二人の関係に勘付いておきながら静観してたじゃないですか。そういうわけなので今度お礼でもしといてくださいよ。僕と違って交友関係が広い南には色々と探ってもらったんですから」
告白のこととかね、と先生へ含み笑いを送ると葵くんは仕切り直すようにソファから背中を浮かせた。
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