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「さっきから何そわそわしてんのよ」 声のした方へ振り向くと、頬杖をついた美香ちゃんが訝しげな目で私を見つめていた。 「そ、そわそわなんてしてないよ」 「してんじゃない。手鏡覗いたり時計見たり廊下見たり。何かあんの?」 そんなことないよ、と慌てて手鏡をスカートのポケットに仕舞う。それから黒板の上にある掛時計をちらりと見るとーーあと、五分。 その瞬間を思うと心臓が強く打った。 月曜日の朝。 彼女が指摘するように私はそわそわと落ち着きがなかった。 当然だ。もうすぐ先生がくる。落ち着いてなんていられない。 彼と顔を合わせるのは互いの想いが重なった土曜日以来で、今の今まで言葉さえも交わしていない。 携帯が入っているポケットに手を添える。 アドレスを交換したもののメールのやりとりはしていなかった。なんて送ればいいのかわからなかった。 いっぱいメールしますね、と張り切って宣言したときの先生の小さな笑顔を思い出してため息が出る。 先生、待ってるかもしれないのに。 けれど、どんなメッセージを送ればいいのかわからない。 恋愛などしたことのない私はこんな些細なことで躓いてしまう。 もどかしいような、くすぐったいような気持ちで二つ前の席で携帯を打っている千秋ちゃんの背中を覗き込んだとき、HRのチャイムと同時に前方の扉ががらりと開いた。 ――来た。 白衣姿の先生に背筋がしゃきりと伸びたーーその直後。 天井と壁が抜けるかのような絶叫が教室内に響き渡った。 「先生、もう大丈夫なの!?」 飛び交う声に私はようやく気づいた。 そうだ。先生が退院したことは皆知らないのだった。
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