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強い風が吹いて桜の花びらが数枚部屋に入り込んできた。
粉雪のような軽さでふわりと二人の足元に降りる。
今年は暖かくなるのが早く三月の初旬だというのに桜の開花が始まっていた。
「桜……今年は早いですね」
「西島」
柔らかな声に呼ばれて視線を戻したら、
「好きです」
え……、掠れた声がもれた。
「僕とまたつき合ってくれませんか」
「……先生」
喉元が熱くなる。
頬を伝った感覚に泣いていることに気づいた。
「待ってるって言っただろ」
う、と声がもれる。堰を切ったように涙が溢れてくる。
肩を震わせて泣きじゃくっていたら、ふいに視界が翳った。
「返事……きかせて」
囁くような声とともに先生が身を屈めて覗き込む。
真剣な、それでいてどこか不安げな眼差しが私の返事を待っている。
私ははっきりと頷くと、
「私も……先生のことが大好きです」
そう言って目の前の身体に飛び込んだ。
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