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「そのストラップ……失くしたって言ってなかった?」 あ、と携帯を持ち上げる。お守りについた鈴の音がちりんと鳴った。 「最近見つかって……」 「良かったねえ。どこにあったの?」 千秋ちゃんが興味津々に小首を傾げる。 失くした――のではなく自ら手放したのは四ヶ月前のこと。 携帯からお守りが消えたことに気づいた二人にはどこかで落としたみたいだと話していた。 「家で……掃除してたら見つかったんだ」 自分のことのように喜んでくれる千秋ちゃんに笑顔で返す。 がたん、と音を立てて美香ちゃんが立ち上がった。机に両手をついて呆然とした顔つきのままなので声をかければ、 「すっかり忘れてた。委員会の集まりがあるんだった」 我に返ったように言ってからすたすたと教室を出ていってしまった。 その背中を見送ってから千秋ちゃんが振り向く。 「美香、なんだか様子変じゃなかった?」 たしかにあのような姿は珍しい。 そうだ、と千秋ちゃんがお弁当を片付けながら話を切り替えた。 「さっき体育祭委員から聞いたんだけど、放課後の大縄跳びの練習中止だって」 「どうして?」 「なんか手違いで練習場所が一年とダブルブッキングしちゃってて譲ることになったみたい。だから今日は空き教室で応援の振付の確認だって」 今週末の土曜日は体育祭だ。 今年こそ大縄跳びで優勝をもぎ取ると活気横溢している我がクラスにとって練習がなくなってしまったのは中々に痛手だ。 「雪ちゃん、ダンスはもう完璧?」 「うん。美香ちゃんの熱血指導のおかげでなんとか振りは入ったよ」 「さすがスパルタなだけある」 笑いながら机脇のフックにかけられたビニール袋から白いボンボンを取り出す。 演目に含まれている応援では流行りのアイドルグループの曲に合わせてパフォーマンスすることになっていた。
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