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「体育祭も今回で最後かあ」 急にしんみりとした空気がやってきて、私の声も静かなものになる。 「もう来年はないんだもんね」 「千秋、絶対有終の美飾ってみせる」 卒業までの日々、他愛もないこの瞬間はきっとあっという間に過ぎていく。 中学生のときもそうだった。体育祭や文化祭の行事も、毎学期にある試験も、夏休みも冬休みも、今年限りのそれらはまるで追い風を受けているかのようにすぐにやってくるのだ。 ふいに教壇を見る。 感傷的な視線だったはずが、簡単にゆらりと移ろいだ。 机上にある携帯電話のお守りを確かめるように触れてみる。 私、本当に先生とーー……。 美香ちゃんにつねられた頬が熱くなった。 マンションの下で別れた後からずっとこの調子だった。 浜辺での出来事を思い返すたびに抱き枕とともにベッドの上を転げ回り、幾度と時計に目をやり、月曜日を待ち焦がれては胸を高鳴らせた。 まるで少女漫画の主人公だ。 今でもどこか信じられないというか、実感がないというか、夢を見ているのではとすら感じる瞬間がある。 それでもこのお揃いのお守りが現実に引き戻してくれる。 そして再びあのときのことを振り返っては熱に浮かされるのだ。 会いたいな。 不在の教壇に何度目かわからない思いを馳せつつ、私はまたしてもプチトマトを頬張るのだった。
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