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体育祭の応援の練習が終了した放課後、それぞれが疲れた顔で教室を後にするなか私も帰り支度をしていた。 鞄のチャックを閉めて――無意識に視線が動いた。 三浦くんや矢口くんと談笑している森くんの横顔を見る。 ……寂しいと思うなんて、自分勝手だ。 木漏れ日の中、悲しそうな顔をした彼を思い出して胸が苦しくなる。 そんな表情をさせてしまった自分から話しかけることなんてできなくて、そして彼からも近づいてくることはなかったので今日は一言も言葉を交わしていなかった。 横目で窺っていた三人が教室を出ていく。 きっともう今までのような関係には戻れない。 それは森くんの元を去ったときから覚悟していた。 けれど、今日みたいな日々がこの先続いていくと思うと――。 ふいに転校してきた日から今日まで見てきた屈託のない笑顔が胸をよぎる。 大切な友人だった。 こみ上げてくるものを落ち着かせるようと深く息を吐いていたら、 「支度できた?」 鞄を肩にかけた美香ちゃんと千秋ちゃんが少し先から声をかけた。 「早く帰ろ。もうクタクタ」 「千秋もー」 「隅っこでサボってたあんたが言うな」 「えへ、ばれてた?」 「本番でミスしたらタダじゃおかないんだから」 楽しげな二人の様子に私は笑顔を返して立ち上がった。 大半の生徒が下校した校内は人はひっそりとしていた。 小さな話し声でも耳に届く中、昇降口に着いたところで「さようならー」と生徒の挨拶が重なって聞こえてきた。 ふいに何気なく振り向くとちょうど廊下の奥から白衣姿の先生が歩いてくるところだった。 挨拶をする生徒に「気をつけて帰れ」と教師らしい返事をしている。 心臓を速くさせながらその姿を目で追っていたら、隣にいた美香ちゃんが声を張り上げた。 「氷泉、お疲れー」 先生の目線が私たちへ移る。 視線がぶつかり、彼の表情が微かに変わったときだった。
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