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「ぅ……あ……?」
目が覚めると、私は知らないところにいた。
天井も壁も扉もない、一面が真っ白な世界。
「どうしてこんなところに……?」
原因を探るために、私は最近の出来事を思い出した。
―――――――
――――
――
玄関で扉を叩く音がする。
リビングで丁度朝食を終えていた私こと誘心雪姫(いざなみせつき)は、別段急ぐこともなく玄関の扉を開いた。
「おはよう雪姫!」
「はぁ……ええ、おはよう社」
扉を開くなり元気な挨拶をしてきたこの男は倉海社(くらみやしろ)。
私の幼馴染その①であり、中学時代からの付き合いだ。
迷惑だから止めろと言っているのにも関わらず毎朝家を訪れる迷惑男。最早ストーカーといっても過言ではないのではないだろうか。
私はコイツが嫌いだ。
「……あら、今日は他の人達は居ないのね?」
他の人達と言うのは、彼に惚れた女性の中でもかなりキャラが濃く、アプローチ回数も多い人達で、俗に言うハーレム要員というものだ。
ツンデレからクーデレヤンデレ、生徒会長に御令嬢に教師など多数の女性が彼に惚れている。
珍しい事に彼の妹である倉海麗花(くらみれいか)は彼に惚れておらず、代わりに百合属性持ちで私が狙われている。
勿論私は、百合属性は持っていない。
「あ、彼女達今日は休むんだって!何やら忙しいとかで」
いつも社の周りを、それこそ金魚のフンのように付き纏っている彼女らにしては、これはとても珍しい事だ。
まあ、彼女らの事は考えるだけ脳細胞の無駄というものなので、私は社に早く出発するように促す。
「それはそうと、時間は大丈夫なの?理王のところにも迎えに行くのでしょう?」
「あ!そうだった!雪姫、早く行こう!!」
溜息を吐きながら、私は社の後を追った。
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