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「成程、私は巻き込まれたというわけね」
と言っても、全てを社のせいにはできないのだが。
視点を変えれば、私が自ら巻き込まれたとも言える。
しかしそれにしても、巻き込まれたにしてはおかしい。
あれは勇者を召喚するための魔法陣だったはず、それなのに周りには何も無いし誰もいない……社と理王すら居ないのだ。
……否。
「そこにいるのは誰かしら?」
「あら、気付いてたんだ?」
聞こえたその声が自分に似ていて、思わず振り返った。
「……え?」
「ふふ、十七年ぶりね」
そこには白いワンピースを着た、私と全く同じ姿の少女がいた。
私はそれに驚くと同時に、何かに『惹かれる』ような感覚を感じた。
「私は貴方の半身、貴方の神格の具現よ」
「半身?神格?……もしかして『これ』と何か関係があるの?」
そう言い私は空中に右手を翳す。
すると辺りの温度が低下していき、翳した掌の前の空間が凍り始める。
数十秒後、私の右手には氷によって形作られた西洋の剣が握られていた。
空気中の水分を操り凍結させるこの異能。
私が平凡な生活を捨てざるを得なくなった原因の一つがこれである。
「そう。最もその『絶対零度』は、貴女が有する『チカラ』のほんの一部なのだけど」
私の半身とやらは、そう言いながらこちらに歩み寄る。
「もっと話したいところなのだけど、残念ながら時間が押してるの。
元に戻ればわかるから、早く済ませるわよ」
直後、視界が光に包まれた。
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