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夏原薫は言った。
「文芸部に入るから。
あと、死ぬ前にあたしのやりたいことに付き合ってよ」
僕がそれは何かと聞くと、また明日と言って帰っていってしまった。
中庭の時計台は六時を指し、遠くの空が赤く染まっていく。
演劇部の連中とすれ違う。
和気藹々と会話する彼等は、とても楽しそうだ。
しかし、僕はそんな彼らのような青春を送れないのだろう。
いや、それでいい。僕にはそんなもの似合わないのだから。
靴を履き替えると、足元に折りたたまれた紙切れが落ちていた。
「夏原さんの入部届けか……」
僕はポッケに突っ込むと、明日渡そう、そのときに彼女のやりたいことを聞き出そう、と思った。
自殺はもう、当分怖くてできそうにないから。
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