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帰り道は田舎道なので暗くて怖い。街灯が電柱に一つずつないのだ。
お化けなんて信じちゃいないだけど、今、驚かされたら心臓が止まるかもしれない。
「怖いものは怖い」
自転車を止め、僕は鞄の中からウォークマンを取り出すと、イヤホンをかたっぽの耳に突っ込んだ。
かたっぽだけに入れるのは心配性な僕の、事故予防だ。
お気に入りの曲をリピートで流す。夏にふさわしいアップテンポの曲だ。
女性のボーカルの音楽ばかし聞く僕はカラオケには絶対誘われないだろうな。
いや、まず友達がいないや。
自嘲気に笑う。
今の僕は猛烈に気色悪いだろうな。
自転車を立ち漕ぎする。
ぐんぐん上がるスピード。
回れ。
回れ。
回れ。
僕は汗が吹き出てもなりふり構わずに速度を上げた。
本当は死ぬ勇気すらないんだ。その気でいても、いざ前にすると何もできなくなるんだ。
「僕は逃げたくても、逃げれない弱虫なんだ」
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