光らないビー玉

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夏の日差しに目を細め、あたしは校内でもっとも古い棟に向かった。 そこにあたしは用がある。 演劇部と書いた入部届を手に持ち、廊下を突き進む。 なぜ、一年生の夏なのにあたしはなぜ今までどこにも入部してないかというと、めんどくさいからだ。 そう、めんどくさい。 突き当たりの扉を開くと外へ出た。 演劇部のある棟は隔離されている。まるで、いつも独りぼっちのあいつみたいに。 屋根付きの通路は砂利で滑りやすいし、雨が降るとびしょ濡れになる。おまけに教室からもっとも遠い位置にあるのでほんと、めんどくさい。 入部届を出そうと思ったのは、親と過ごす時間をへらしたいからだ。 あたしの両親はバカだ。 パチンコが好き、酒が好き、不倫するわ、娘から金取るわ、親としての自覚がない。父親にいたっては暴力を振るってくる。 なによりも、あたしに興味がない。 小さい頃から嫌な想いばかりしてきたけど、今あたしがこうしてのびのびと過ごせているのはおばあちゃんのおかげだ。 隣町に住んでいるおばあちゃんだけど、おじいちゃんが死んでから足腰が悪くなって家から出ない日が多くなった。 いつもあたしの面倒を見てくれたけど、今じゃ週に5日来てくれるのみになった。 おばあちゃんは言う。 「辛くなったらうちにおいで」 おばあちゃんと毎日いたいあたしはそうしようと考えている。 しかし、思うようにはいかず、おばあちゃんは入院してしまった。 あたしが無気力なのは両親のせいと言ってもあながち間違いはないだろう。
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