光らないビー玉

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爽やかな風が校舎の陰に咲いた向日葵を揺らす。 目の前にはお化けでも出そうな古い棟。 「……めんどくさい」 ぎしぎし軋む扉を開けると階段が目の前にあった。 棟内は独特の古屋のような臭いが立ち込めていた。染みだらけで剥がれかけの白か茶色かわからない壁紙。 立ち止まるあたしをよそに、演劇部らしいおさげの女の子が段ボールを抱えてあたしの横を通り外へ出ていった。 「四階だっけ? あの子に聞けばよかったかな?」 いったん戻って外を見ると、おさげの子はもうずいぶん遠くを歩いていたので声をかけるのをやめた。 仕方なく、木製の階段を上がる。 それにしても埃っぽい。 マスクしてこればよかったかな。 四階に着く頃には少し息があがっていた。 「ふう、右? 左かな?」 見学も兼ねて来たのに、部室が見当たらない。 しらみ潰しにするか。 あたしは一つ一つの扉を開けていく。 教材や文化祭で使ったのだろうかと思われるモニュメントがある倉庫。 また似たようなものが積まれた倉庫。 埃の溜まった汚い教室。 「倉庫だらけだ」 廊下を一人突き進むあたしの目に戸が開いている教室が入る。 たぶん、そこが演劇部室なのかもしれない。 あたしはなるべく埃をたてないようにして歩く。 それにしても、ここらは本当に人が来るのだろうか?
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