2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おじゃましまーす……」
小さな声を出して、その部屋に入る。入って、すぐ本棚が目に入る。
「本だらけじゃん」
がたがた。
物音が本棚の奥から聞こえた。誰かいるのだろうか?
ゆっくりと床に積まれた本を蹴り飛ばさないように近づく。大きく古いアンティークの時計の脇をすり抜けて、奥へと進む。
本棚が所狭しと立ち並ぶ中、あたしは動けなくなった。
それは目の前の少年のせいだった。
「香川恭平くん、だよね?」
「へ? お! うあ!!」
机の上に乗っかっていた香川恭平は体勢を崩して転げ落ちた。
「大丈夫?」
「……」
何もしゃべらず、埃を払う香川恭平。その黒い髪まで埃がついて、見ていると少し面白い。
だけど気にかけてやったというのに返事もない。
あたしはむっとして彼が手に持っていたものを奪った。
「あっ!」
「へー、自殺しようとしてたんだね」
先端が結わえられたロープ。
あたしは首吊り用のロープをカウボーイのように頭上で回した。
「だまれ」
教室で聞いたことのない彼の声に、背筋がぞくっとした。
「自殺して何が悪い」
彼は淡々と呟く。
「あたし、演劇部入るから。死ぬならこの棟じゃなくて自宅とか、近所の森とか樹海辺りに行ってきたら? めんどくさい」
あたしはロープを彼の首にかけると、きゅっと引っ張った。
彼が慌てて隙間に手を入れ、締め付けられないようにした。
「あはははは、可笑しい。自分死のうとしてたのに、何抵抗してんの?」
「……だ、だまれよ」
激しく頬を紅潮させる彼はじたばたと抵抗を始めた。
そんな態度にむずっと来て、矛盾した彼をあざ笑った。
最初のコメントを投稿しよう!