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「ここ、本多いね。何の部屋?」
「くそ、出て行け」
香川恭平はそんなことを言わない。教室の彼は本当に香川恭平だったのだろうか?
「いいから答えなよ、死にぞこない」
少し凄むと彼は教室のなよなよしたナメクジみたいな惨めで可愛そうなやつになった。
「ここは……文芸部の部室さ」
「他のやつらいないの?」
「いない。もう廃部だ。僕はたった一人の文芸部員。もう、元が付くけど」
本棚に感慨深げに手を添える彼はやはり面白い。何の未練があるんだ? こんなぼろ教室に。
「へー。居場所がなくなったって感じ?」
いま、あたしは最高に屑だろう。他人が不幸でこんなに嬉しい。
「あ?」
「だってさぁ、香川恭平。あんた、昼休みもここに来てるんでしょ? 飯食う友達もいないんでしょ? あたし知ってるよ。昼休みも部活動なんて、頑張り屋さんだね!」
肩をぽんと叩くと、香川恭平は唇を噛み締めた。
「つまんないなぁ。なんかいいなよ? どしゅ、どしゅ」
おなかにゆるいパンチを入れると彼は涙目になった。
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