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雑貨フロアを少しばかり横切って、カフェフロアの脇にある厨房の扉を押し開く。
「木村さん、お疲れ様です」
コックコート姿の彼に声を掛けると、見た目とは裏腹に繊細な手つきでカップケーキにトッピングをあしらっている木村さんが、その手を止めてちらりとこっちへ視線を寄こした。
「ああ、店長。お疲れ様です。今日はなかなかの売れ行きですよー」
そう告げてからまたカップケーキに視線を落とす木村さんに「そうですか」と微笑み返す。
売れ行きが良いのは、多分小笠原が出ていたせいだろう。
女性客に人気のある彼がシフトに入っている日はすこぶる売れ行きがいい。
まあ奴を褒めると調子に乗って良からぬ方へエスカレートしそうだから変に褒めた事は一度もないが。
「あれ? 店長が居るってことは、僕は休憩に入っていいんですか?」
背後から声が掛かって振り向くと、ほんわかとした雰囲気の童顔で大きな丸い瞳がこっちを見上げていた。
男の俺でもコイツは可愛い部類に入るだろうと思う。
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