君恋1-1

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 俺はここのオーナーに恋をしていた。  名前は神条(かみじょう)雪乃(ゆきの)といって、幼馴染でもある。  女みたいな名前だが、歴とした男で俺より四つも年上だ。  幼い頃は雪にぃと呼んで懐いていた記憶がある。  そう呼ばなくなったのは、自分の気持ちに気付いた頃からだった。  俺は高校、神条さんは大学に上がって環境も変わったせいか会う機会が減り、離れる時間が増えたことで相手の存在の大きさを思い知った。 「店長? 最後のお客さん、帰りましたよ」 「あ、そうですか。レジ担までさせてしまってすみません」  手を動かしながらも上の空だったことに申し訳ないと首の後ろを掻く。 「大丈夫ですよ。それより、何か考え事ですか? 役職的には私の方が下ですが、経験値なら私の方が勝ってると思うので、何でも相談して下さい」  嫌味のない、本当に打ち明けてしまいたくなるほどに木村さんの言葉は優しかった。  それだけで凄く救われたような気持ちになる。
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